妻へ
先日、妻が息をひきとりました。
服買いにいって来る。それが私の聞いた彼女の最後の言葉でした。
彼女への言葉をお目汚しとわかっていますが書かせてください。
ここなら彼女に届く気がするんです。
おまえが日記を書いている事はわかっていたけど
恥ずかしい気持ちもあり、覗くことはしないようにしていたんだ。
なんだか夫婦生活丸出しで書いてるなんて言うからさ。
今更見ることになってこんな所でおまえの言葉を目にするなんてそれもこんな形でなんて。
なんでおまえはこんな所で
俺にはメールも電話も手紙もくれないくせに。
おまえは、いつも不器用で転んだり指切ったり熱出したり騒がしいやつで
ふざけてばっかりでいつも勝手にふらついて
その上勝手に俺を置いていってしまうなんて反則だろう
ずっと一人で静かなんだよ家の中が。
風呂場にカビが出たんだ風呂場掃除はお前の係りだろ?
夏物の服だって何処にしまってあるのかわからないんだ。
そうだ、兄ちゃんち無事に生まれたぞ。元気な女の子だ。
話したい事がたくさんあるんだ、影でもいいから出てきてはくれないか。
おまえがいないのに季節が勝手に変わろうとしてるんだ。おかしいだろう?
でも俺がここの季節に留まる事も許しては貰えないんだよ
気が狂いそうだ。
だけど、いつか会えるよな。
いつかのカウンターみたいにさ
パイナップルみたいな頭のおまえに合えるよな。
その日まで男磨いてるからな。
どこにいたって探し出してやるからな。
バッチリプロポーズも決めてやるよ。
今度は絶対俺の死に目に遭わしてやる。
こんなありふれた言葉でしか気持ちを表せないのがもどかしいが最後に
愛してる。
我が永遠の妻へ。